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【書評】豊かさの誕生―成長と発展の文明史


よく、歴史や文明などの一般教養は何に役立つのか?という問いがある。

僕は特にテクノロジー・社会科学に関する本が大好きで、
ちょうど境界になるだろう文明や◯◯文化など歴史にも関心がある。
大学時代は書評を1年間で50冊くらい書いていた。


そんな自分はその問いに対しては、こう答える。
 ・時代の流れや感覚が掴みやすくなる
 ・自分の世界が広がり、気づきが増え、幸福感が高まる

つまり、一般教養は触れて損はないだろうという見解。



もちろん誰も世界史を1から学びなおせと言っているのではない。
それが好きな人は好きに社会人向けの世界史まとめ書籍でも読んでみるといい。
(山川の世界史に手を出したが、いろいろ自分で調べる必要あったためまあまあ辛かった)

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その中でも、文明について知識を深めることを勧める理由は、みなさんが社会の発展を避けることのできない人類の世界で生きているからである。

どういうことか?
人間がこの世界で生きている限りは社会の発展が避けられないこと、
それをとりまく技術的・経済的・地政学・その他なんとか学的な要因について知ることができれば
きっと長いもしくはちょっと先の未来について何が起こるのかが理解できると思っているからである。



そこで今回、大学で読んだ本の中でも確実にベスト3に入るほど面白く有益な本であったある文明の法則に関する本を紹介する。




私がオススメするのはこちら。豊かさの誕生―成長と発展の文明史(著者:ウィリアム・バーンスタイン


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国家として経済的豊かさを安定的かつ長期的に発展させていく国家にはどんな要因があったのか?という問いに対して答えている。


おおざっぱにまとめると、1500年以前の国家では、過去さまざまな国家が繁栄と衰退を繰り返してきた。それまで略奪することで繁栄した国家は、安定した経済成長はできなかった。


その理由は、その増えた人民を養うだけの食糧を自国の外にある資源を略奪することのみでは繁栄することができなくなり、国家は経済的に破たんしていくというものである。


しかしその中でも、

私有財産*1、資本主義*2、輸送/通信手段の発達*3、科学的合理主義*4

がすべて確立された国家が後に現れ始め、それらの確立されたいかなる国家は安定ときには急速に経済成長を行い、また一つでも欠けている国家はたとえ繁栄してもすぐに衰退がおとずれ安定した成長をすることはできないという結論を打ち出しているのが本書。

まあとにかく、めちゃくちゃ面白い。
その要因が正しいかどうかは読んでみて判断していただきたいところではあるが、
過去の国家の状態や統計データの分析により得た根拠から述べ、またそれぞれの要因が確立されるまでの歴史をたどっている。




ではなぜこの本が有益であるか?
国家や社会の勃興・衰退というものを、もっと自分の周りにある小さな組織に当てはめてみて考えても同じことが言えるだろうということである。


社会インフラ(資本経済・輸送/通信手段)だけではなく、人間としての権利や、倫理観(私有財産権、科学的合理主義)といったようないわゆるものの考え方となる「価値観」が国家の繁栄に関与していることに着目していただきたい。

科学的合理主義→物事を合理的に考えることを重視すること
私有財産権→自分が稼いだ財産は誰に搾取されることなく自分で管理できること→やったことがきちんと対価として得られる


例えば職場で、自分の意見が通らないときに合理性がない場合以前に、経験や前例がないといった理由で採用されず、悔しい思いをしたことがあるだろう。

例えば職場で、自分のやった成果が正しく評価されない、または逆に、既得権益によって過大評価を得ていることをみたことがあるだろう。

だからなんだ、という話かもしれない。
だが、自分たちが日々直面する問題の対策としての仮説を立てるためのインプットとしては裏付け共に悪くないと思っている。


つまりは、こういうものの見方の広がりや知識や偉人達の経験則を、自分の周りの社会に適用していく仮説を立てることこそ、僕らの生きるための血肉となると思っている。これらのヒントを活用して自分たちの環境を改善したり、いかに不健全な社会であるかを見つめることにつながるのである。


興味がある方はぜひ。
買うと高いので図書館で借りることを激しく勧めます。

*1:過去の社会では封建制度や階級の有無があり、大部分の人民は領主の土地を耕し領主におさめ、領主は政府に上納していた。 この制度は個人の生産性の向上に対するインセンティブは生まれることはなく、時には財政難に陥った政府が財産の没収、差し押さえ等があり、生産性が向上する可能性は遥かに低かった。 ローマは私有財産権を有していたが、経済成長のための手段を征服でまかなっていたため、奴隷制度が生産に負担になり個人が経済的に土地を手放すことが多かった。 司法と行政を明確にわけ、王の恣意的な財産没収を防いだマグナカルタが作られた、しばらくして法律家や議会人が守る努力をしつづけ、コークが法律技術を駆使して抜け穴のないマグナカルタの改訂版を作りあげた。 後にロックが個人の私有財産権を広めるための書物を出版して広める。

*2:過去資本市場で問題だったのは情報の不足であり、借り手の資金や利子率の相場などの情報が不透明であり、貸し手は貸そうという動機がなくなり、 ローマは歳入を制服による略奪物で賄っていたために財政崩壊をした。後にルネサンス時期のヴェネツィアは高利貸の例外を設けていったが、ローマ商法が会社の債務を経営陣の財産と家族の身分を脅かすものであり、リスクが高すぎた。 数学や統計の発展と応用に伴って金融工学金融商品がどんどん改良され、為替市場や航海を行う会社が初めて近代的な株式会社の設立を行うなど。 このような発展の意味するところは、憲法や法律としての自分自身の財産が守られることだけでなく、実際にそういったリスクテーキングをおこないやすいような大規模金融機関の存在や低金利を維持する中央集権的な組織が必要であるということである。

*3:大量生産されたモノはあるスケールで輸送速度が向上することで飛躍的に経済成長を促進する。 飛躍的なスピードの変化が実際に世界を変えるにいたる場合が存在するいい事例。 とくにスピードの変化によって生産物の流出入が大幅に変化することで市場に出回る商品の価格の差がなくなり、人口の動態までも変えてしまうあたりは特筆すべきであるとのこと。

*4:科学技術が発展するには、社会が都合のいいように立てた仮説を演釋的な方法によって正当化して物事をとらえるのではなく、実際の現象に着目して一般化をおこなう帰納的な方法で物事をとらえる必要がある。 宗教が立てた仮説は多くの科学者が実際の観測によって基づいて導き出した仮説と論争を巻き起こし、長い年月をかけて科学的な合理主義が浸透した。技術や科学を発展させ、それを蓄積させるためにはそれを受け入れる社会である必要がある。