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【書評】クリエイティブ資本論

人間の創造力や問題解決能力はどういう環境や組織、はたまた都市で育まれていくのか、クリエイティビティに興味を持って手に取る.


都市経済学者の著者が2000年代初期に出版。
今後の社会は単純作業をするワーキングクラスではなく、新しいアイデアや技術、コンテンツを創造し、再編集し、問題解決をおこなう人材(クリエイティブクラス、コトラー
がいう知識労働者にかなり近い)の時代が到来し、彼らがどれだけ都市の中で存在し、より生産性の高い業務を行うことができるかが今後の国家や都市の競争力を決定するというもの。

組織の肩書が個人のアイデンティティになっていた工業社会の時代からライフスタイルが変化し、自分自身の関心や興味による自己表現を重視する時代になっているため、自分たちの行動を規制、規定するのは家族や組織、近隣ではなく、自分のアイデンティティに変化し、またそのアイデンティティを作り上げる努力をしなければならない時代である。
近代のクリエイティブクラスが家庭をもつことや家族や周囲の人々との弱いつながりを好むのは自分のアイデンティティに基づく行動の選択の結果であり、以前より多くの人と関わりながら自分の関心を高めていることによる。


その高い専門性やアイデンティティを持つクリエイティブクラスによって現在の経済成長はドライブされ競争優位が決定している。


企業の競争優位がそういった人材の高い専門性によるものである以上、
クリエイティブな人材が好む自由で寛容、多様性を受け入れる機能が都市がとして求められるという。

統計上、近年の経済成長はゲイ指数、ボヘミアン指数等の都市の自由・寛容さ・多様性を測る指標と、クリエイティブな人材(エンジニア、アーティスト、デザイナー、芸能文化に従事する者等)の集積度、経済成長率に強い関連性があることを統計データで分析してる(有意何%等は記載なしですが)

自由・寛容・多様性がさまざまな人と関わる機会や自由な発想を助長し,彼らの好奇心を満たし,多様なアイデア
の源となる。

ではそのような人達が自由で寛容な都市に何をのぞんでいるか。

クリエイティブ人材が好むのはスポーツ観戦等の受け身なものではなく(スポーツ観戦が好きなクリエイティブ人材もいるが)単位時間当たりのエンタテイメント性の高さだったり、地理上そこでしか経験できない文化に触れること、またそのような環境で未知なる体験をしたり自己表現できるかどうかだという。


国や自治体は、人口減少・経済成長の鈍化を食い止め、競争力を高めるために様々な方法を試している。
われ次のシリコンバレーは自分たちだといわんばかりに。

例えば雇用創出、スタートアップを生み出すような経済特区法人税の引き下げ、学術機関の投資、設置等。
しかし、クリエイティブクラスが好むような、地域でひっそりと自発的に育っている大衆文化や住む人の多様性に目をやったり、その意見を取り入れるしくみはなかなか存在しないのでどうしても剥離が生じているように感じてるという筆者。


日本でも様々な地方都市が第二のシリコンバレーを生み出そうとしてるが、多くの方法は単にスポーツスタジアムを誘致したり、画一的な大型ショッピングモール等を
作り、地域の文脈を無視した興業開発や観光客誘致にとどまる。

 

チームラボ猪子さんのおっしゃることのほとんどが一致してるわけで、このままだともし社会が未来志向性をもっていたら東京に多くの人が集まっていくと思われる。
しかし東京から日本独自の多くの文化が生まれていることは事実だが、誰もが簡単に自己表現しやすいような環境であるかどうかはわからない。
日本の場合は東京より多様な都市がないだけで、もし様々なバックグラウンドを持つ人が住む都市が形成し、優秀な学術機関さえあれば面白いと思う。

 

 

ここまで読んでみて、「ああなんだ最近では割と一般的な話だな」と思う一方で、一般的に言われてたことが実際のデータで裏付けられそれなりに妥当だなという確証を得られたのが一番の学び。

政府主導のクールジャパンや地域の活性化を行う当事者が、経済成長を担う人材が好む文化の重要性や社会が向かう方向を見極める目をきちんと持っているか、また持っていなければそれを正そうとする仕組みが属人的になっていることが問題であると思う。

やはり地理や文化の優位は必ず存在する。
感性をこれからも大事にしていきたい。

これがもう10年以上の前の本であったことに結構驚きを隠せない。
もっとわかりやすくして中学生とかに読ませるべき良書。

 

 

クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭

クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭